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退職金の手取り計算

退職金の総額と勤続年数から、所得税・住民税を引いた手取りを試算します。

1年未満の端数は切り上げます(例:21年1ヶ月 → 22年)。

手取り額(概算)

9,493,248

税額合計

506,752

退職所得控除額
4,000,000
課税退職所得金額
3,000,000
所得税・復興特別所得税
206,752
住民税(10%)
300,000

iDeCo・企業型DCの一時金や前職の退職金を先に受け取っている場合は退職所得控除の調整が入り、この計算には含まれていません。2026年1月1日以後に受け取るDC一時金が先にある場合、判定期間は前年以前4年内から9年内に延びました。

「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出している前提の概算です。未提出だと控除も1/2も使えず、支給額の20.42%が源泉徴収されます。住民税の端数処理など細部は異なることがあるため、最終的な税額は国税庁と市区町村でご確認ください。

退職金の手取り計算

退職金の総額と勤続年数から、税引後の手取りを試算します。

退職金から退職所得控除を引き、原則としてその1/2を課税退職所得として所得税・復興特別所得税2.1%と住民税10%を計算します(所得税法第30条)。退職所得は分離課税なので、給与所得とは合算されません。

  • 退職所得控除は勤続20年以下が1年あたり40万円(計算額が80万円未満なら80万円)、20年超は800万円+1年あたり70万円です。例:勤続30年なら 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円が控除されます。
  • 控除を引いた残額の1/2だけが課税対象になります(1,000円未満切捨て)。例:退職金2,000万円・勤続30年なら (2,000万円 − 1,500万円) ÷ 2 = 250万円が課税退職所得金額です。
  • 勤続年数は1年未満の端数を切り上げます(所得税法施行令第69条第2項)。1ヶ月でも超えると控除額が変わります。例:21年1ヶ月は22年として扱い、控除額は 800万円 + 70万円 × 2年 = 940万円になります。
  • 勤続5年以下は扱いが変わります。役員等なら1/2課税がなく(特定役員退職手当等)、役員等以外でも控除後300万円を超える部分には1/2を使えません(短期退職手当等、令和4年分以後)。例:勤続4年・控除後500万円の非役員なら、課税退職所得金額は 150万円 + (500万円 − 300万円) = 350万円です。
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しないと、退職所得控除も1/2課税も適用されません。実務で最も損の大きい手続きミスです。例:支給額の全額に20.42%が源泉徴収され、取り戻すには自分で確定申告をする必要があります(国税庁 No.2732)。
  • 退職金は「臨時に受けるもの」にあたり、健康保険法上の報酬にも賞与にも該当しないため、社会保険料はかかりません。例:差し引かれるのは所得税・復興特別所得税と住民税だけで、健康保険料や厚生年金保険料は控除されません。
退職所得控除
勤続年数で決まる控除。20年以下は1年あたり40万円(最低80万円)、20年超は800万円+1年あたり70万円。障害者になったことに直接基因する退職の場合は100万円が加算される(所得税法第30条)。
課税退職所得金額
(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2 で求め、1,000円未満は切り捨てる。分離課税のため給与所得や基礎控除とは合算されず、令和7年度税制改正の基礎控除引上げも退職所得の税額には影響しない。
復興特別所得税
所得税額の2.1%を上乗せする付加税(復興財源確保法第13条・第28条)。源泉徴収税額は「課税退職所得金額 × 税率 − 控除額」に102.1%を掛け、1円未満を切り捨てて求める。
特定役員退職手当等
役員等勤続年数が5年以下の役員等が受け取る退職手当。1/2課税が適用されない。役員等には法人税法上の役員のほか、国会・地方議会の議員や国家・地方公務員も含まれる。
退職所得の住民税
退職所得は住民税も分離課税で、税率は10%(道府県民税4%+市町村民税6%)。市町村民税・道府県民税はそれぞれ100円未満を切り捨てる。2013年1月1日に従来の10%税額控除は廃止された。

退職金の税金は申告書1枚で変わる

退職金2,000万円・勤続30年なら、引かれる税金は約40万円です。ところが「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出していないと、同じ退職金から約408万円が源泉徴収されます。差は約368万円で、取り戻すには自分で確定申告をするしかありません。

申告書を出したときと出さなかったとき

退職金を受け取る前に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すると、勤務先が退職所得控除と1/2の計算をしたうえで源泉徴収します。多くの場合、これで課税関係は終わり、確定申告は不要です。

提出しなかった場合は扱いが一変します。退職所得控除も1/2も適用されず、支給額の全額に20.42%を掛けた金額が源泉徴収されます(国税庁タックスアンサーNo.2732)。退職金2,000万円なら408万4,000円です。正しく計算すれば40万5,702円ですから、差額は367万8,298円になります。

この差は確定申告をすれば還付されますが、放置すれば戻ってきません。申告書は税務署に提出するものではなく会社が保管するだけなので、手間はほとんどかかりません。退職手続きの書類の中で、金額の影響が最も大きい1枚です。

退職所得控除額の求め方

退職所得控除額は勤続年数だけで決まります。勤続20年以下の部分は1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円です(所得税法第30条第3項)。計算結果が80万円に満たない場合は80万円になります。

勤続年数は1年未満の端数を切り上げます(所得税法施行令第69条第2項)。21年1ヶ月勤めたなら22年として計算します。1ヶ月の差で控除額が70万円変わるため、退職日が年をまたぐかどうかは確認する価値があります。

障害者になったことに直接基因して退職する場合は、上記の控除額に100万円が加算されます(同条第6項第3号)。この計算機はこの加算に対応していないため、該当する方は結果より税額が少なくなります。

1/2が使えない2つのケース

収入金額から退職所得控除を引いた残額に1/2を掛けたものが課税退職所得金額です(1,000円未満切捨て)。この1/2が退職金の税負担を軽くしている最大の要因ですが、例外が2つあります。

1つは特定役員退職手当等です。役員等としての勤続年数が5年以下の場合、1/2は適用されません(所得税法第30条第2項・第5項)。ここでいう役員等には法人税法上の役員だけでなく、国会議員や地方議会議員、国家公務員・地方公務員も含まれます。

もう1つは短期退職手当等です。役員等以外で勤続年数が5年以下の場合、残額のうち300万円までは1/2ですが、300万円を超える部分は全額が課税対象になります。令和4年分から適用されている扱いです。

なお、この計算機の役員判定は入力した勤続年数全体で行うため、勤続8年のうち役員が3年といったケースは正しく判定できません。役員在任期間と従業員期間が分かれている方は、金額をそのまま鵜呑みにしないでください。

税額の計算手順と計算例

課税退職所得金額に所得税の速算表(所得税法第89条)の税率を掛け、控除額を引き、さらに102.1%を掛けます。上乗せされる2.1%が復興特別所得税です(1円未満切捨て)。住民税も分離課税で、税率は10%、内訳は道府県民税4%と市町村民税6%で、それぞれ100円未満を切り捨てます。

退職金2,000万円・勤続30年で計算します。退職所得控除は800万 + 70万 × 10 = 1,500万円。2,000万 − 1,500万 = 500万円で、その1/2の250万円が課税退職所得金額です。

所得税は 250万 × 10% − 97,500円 = 152,500円。これに102.1%を掛けて155,702円。住民税は市町村民税150,000円と道府県民税100,000円で合計250,000円。税額の合計は405,702円、手取りは19,594,298円です。2,000万円に対する負担率は約2%にとどまります。

退職所得は分離課税なので、同じ年の給与所得や基礎控除とは合算しません。令和7年度税制改正で基礎控除と給与所得控除が引き上げられましたが、退職所得の税額には影響しません。

2026年に変わったiDeCoの10年ルール

2026年(令和8年)1月1日以後に支払を受けるDC・iDeCoの一時金については、退職所得控除の重複調整のルールが変わりました。

これまでは、iDeCoの一時金を先に受け取り、5年空けてから会社の退職金を受け取れば退職所得控除をそれぞれ使えるとされていました。所得税法施行令第70条第1項第2号ロの改正で、この判定期間が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に広がっています。実質的に5年ルールが10年ルールになったということです。

順序が逆の場合、つまり会社の退職金を先に受け取ってから後でDC一時金を受け取る場合は従来どおりで、判定期間は「前年以前19年内」です。

2025年までに書かれた受取順序の節税記事をそのまま実行すると、想定より控除が減ることがあります。この計算機は前に受けた退職手当等がある場合の控除調整に対応していないため、iDeCoや前職の退職金をすでに受け取っている方は、表示される税額が実際より少なく出ます。

誤解されやすい点と確認先

日本では退職金の支給そのものは法律上の義務ではありません。支給するかどうか、いくら支給するかは就業規則や退職金規程で決まります。一方で税制上は退職所得控除・1/2・分離課税という強い優遇があり、同じ金額を給与として受け取る場合とは負担が大きく違います。

退職金には社会保険料がかかりません。健康保険法第3条第5項の報酬にも第6項の賞与にも該当しない「臨時に受けるもの」だからです。手取りから引かれるのは所得税・復興特別所得税・住民税だけです。

2027年(令和9年)1月1日からは防衛特別所得税1%が新設され、同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%に引き下げられます。上乗せ分の合計は2.1%のままなので、2026年時点の計算結果は変わりません。

ここでの金額は目安です。実際の源泉徴収額は前に受けた退職手当等の有無、役員在任期間、住民税の端数処理によって変わります。確定した金額は退職所得の源泉徴収票で確認し、判断に迷う場合は国税庁のタックスアンサーまたは所轄の税務署にご確認ください。

勤続年数別の退職所得控除額(所得税法第30条第3項)
勤続年数退職所得控除額
5年200万円(40万円 × 5年)
10年400万円(40万円 × 10年)
15年600万円(40万円 × 15年)
20年800万円(40万円 × 20年)
25年1,150万円(800万円 + 70万円 × 5年)
30年1,500万円(800万円 + 70万円 × 10年)
35年1,850万円(800万円 + 70万円 × 15年)
40年2,200万円(800万円 + 70万円 × 20年)

よくある質問

「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなりますか。
退職所得控除も1/2も適用されず、支給額の全額に20.42%を掛けた金額が源泉徴収されます。退職金2,000万円・勤続30年なら、本来405,702円のところ4,084,000円が引かれ、差は約368万円になります。取り戻すには自分で確定申告をする必要があります。
勤続20年3ヶ月の退職所得控除はいくらですか。
870万円です。勤続年数は1年未満を切り上げるため21年として扱い、800万円 + 70万円 × 1年 = 870万円になります。20年ちょうどなら800万円なので、3ヶ月の差で70万円変わります。
退職金2,000万円・勤続30年の税金はいくらですか。
合計405,702円です。退職所得控除1,500万円を引いた500万円の1/2、250万円が課税退職所得金額で、所得税と復興特別所得税が155,702円、住民税が250,000円になります。手取りは19,594,298円です。
退職金に社会保険料はかかりますか。
かかりません。退職金は「臨時に受けるもの」であり、健康保険法第3条第5項の報酬にも第6項の賞与にも該当しないためです。引かれるのは所得税・復興特別所得税・住民税だけです。
iDeCoを先に受け取れば退職所得控除を二重に使えますか。
2026年1月1日以後に受け取るDC・iDeCoの一時金からは、判定期間が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に広がりました。5年空ければよいという従来の方法は使えません。逆に会社の退職金が先でDC一時金が後の場合は、従来どおり「前年以前19年内」です。
勤続5年以下でも1/2にできますか。
2つの例外があります。役員等としての勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等は1/2が適用されません。役員等以外でも、収入金額から退職所得控除を引いた残額が300万円を超える部分には1/2が適用されません(短期退職手当等、令和4年分から)。